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 帆のような道具を手で操作して風をつかみ、乗っているボードを水面の上に浮かせて滑るように進む。湘南や三浦半島の海岸で見るようになった「ウイングフォイル」は、愛好者が「浮いて飛ぶような感覚が爽快」と語るニュースポーツだ。

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浮きながら海面を進むウイングフォイル(左側)と、ウィンドサーフィン。背後は江の島=2025年6月2日、神奈川県鎌倉市の材木座海岸、上野創撮影

 初夏の風がそよぐ5月半ば。三浦海岸の駅から坂を下ると、海に浮かぶ青やオレンジの「翼」が見えた。よく見ると足元のボードが海面から30~50センチほど離れて空中に浮き、ふわふわ上下しながら進んでいるように見える。

 浮上したボードの裏面に付けた支柱(マスト)が、水面下にある「水中翼」(フォイル)とつながっている。

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ウイングの操作を説明する桑谷耕作さん。ボードの下の「マスト」とつながっているのが水中翼「フォイル」=2025年5月16日、神奈川県三浦市の三浦海岸、上野創撮影

 「スピードが上がってボードが自然に浮き上がるのは、フォイルが上に行こうとする揚力を生み、ボードを持ち上げて海面から離すから。飛行機が飛ぶ原理と似ています」。そう話すのは海岸前でスクールと販売の店「FiNe(ファイン)」を営む桑谷耕作さん(47)。水中翼は、離島航路などの定期船「ジェットフォイル」がよく知られているという。

 桑谷さんは千葉でウィンドサーフィンのインストラクターを続け、17年前、三浦でスクールや販売の店を開いた。5年前のコロナ禍を機に、出会って間もないウイングフォイルに軸足を移した。

 「初めて乗って、海面すれすれを飛びながらスーッと走る感覚に驚いた。現実感がない不思議な魅力で、鳥ってこういう感じかなと思いました」と話す。

 ボードが水面から離れると水の抵抗を受けないので、風が弱くても走りやすい利点がある。

 ウイングは特殊なポリエステル製などで空気を入れる部分があり、形を安定させて使う。手で角度を変え、つかむ風の強さを調節するのはウィンドサーフィンやヨットと同様だが、帆(セール)と異なり、ボードとつながっていない。

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ウイングフォイルを楽しむ女性(65)。水面下の水中翼がボードを浮かせ、ウイングで風をつかんで走る。左奥はウィンドサーフィン=2025年5月16日、神奈川県三浦市の三浦海岸、上野創撮影

 この日、乗りに来ていた女性(65)は5年ほど前にウィンドから転向した。「道具が軽くて運びやすく、セッティングも楽ちん。遊べる風域が広く、なにより海の上を飛ぶ感覚が楽しい」と語る。

 道具の価格は幅があるが、新品セットで50万円ほど。半額以下など割安の中古も増えている。通信機を使う桑谷さんのスクールはレンタル料も含めて3回で3万5千円。いかに早く上達するかを考え、1対1が基本という。

 水中翼はうねりや波の力を利用して乗ることもでき、ボードの上に立ってパドルをこぐSUP(サップ)(スタンドアップパドル)やサーフィンに装着する楽しみ方もある。また水中翼を付けたウィンドサーフィンもあってパリ五輪では公式艇に採用された。

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初心者用のフォイルボードについて説明するローカス鎌倉の石田哲夫さん。フィンが横流れを防ぐという=2025年6月2日、神奈川県鎌倉市材木座6丁目、上野創撮影

■遠浅の鎌倉の海ではいくつも…

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